「推しの子」の物語終盤、宮崎の地だけでなく東京の芸能界にまで姿を現し、圧倒的な異物感を放つ謎の少女「ツクヨミ(カラスの少女)」。
見た目は幼い子供なのに、なぜかアクアやルビーの「前世」や「最期」を詳細に知りすぎている…。
ファンタジー要素が排除された芸能界の物語において、彼女はいったい何者なのでしょうか?
この記事では、最新の作中描写と日本神話の観点から、ツクヨミの正体と彼女が映画編に介入した真の目的を徹底考察します。
単なる「不気味な子供」ではなく、物語を裏で操る「神」としての役割。そして、なぜ彼女が「芸能の神」とも呼ばれるのか。
その正体を深く理解することで、アクアたちの復讐劇が向かう先と、タイトルの本当の意味が見えてくるはずです。
推しの子 ツクヨミの正体は?結論:カラスを従える「芸能と導きの神」
結論から言うと、ツクヨミの正体は「八咫烏(ヤタガラス)の化身であり、アメノウズメ(芸能の神)の性質も併せ持つ超常的な存在」である可能性が極めて高いです。
作中において、彼女は単なる人間(転生者)とは一線を画す、以下の特異な性質を見せています。
- 全知の視点:アクアとルビーの転生の経緯、ゴローとさりなの死に際の詳細、そして星野アイの魂の行方を知り尽くしている。
- 神としての自認:前世の記憶を持つ者を「神」と定義し、自分もその理(ことわり)の中にいる発言をする。
- 物理的な干渉:映画『15年の嘘』編では、戸籍を持つ子役「ツクヨミ」として現世に定着し、映画制作に直接関与している。
つまり彼女は、「人の器(肉体)を使って現世に顕現し、物語を観測・誘導する神」と言えます。
表の顔:天才子役として潜伏する「ツクヨミ」
まずは、物語上の「表向きの顔」を整理しましょう。
初登場は原作第8巻(75話)。ゴローの遺体が眠る宮崎・高千穂でアクアたちの前に現れました。
特徴は、ゴシック調の服装と、常に周囲を舞う大量のカラス。この時点では、ただのアクアたちの過去を知る不気味な存在でした。
しかしその後、映画編ではなんと「子役」としてアクアたちの現場に参加。「親はいないが戸籍はある」と語り、見た目は4~5歳の幼女として振る舞いますが、その言動は大人びており、周囲を威圧するほどの演技力を持っています。
彼女にとって人間社会での活動は、目的を果たすための「暇つぶし」あるいは「介入手段」に過ぎないのでしょう。
裏の顔:アクアとルビーを誘導する「トリックスター」
彼女の真の役割は、星野アイ・アクア・ルビーの運命を「あるべき結末」へと導くことです。
時にアクアへ「復讐を忘れるな」と囁き、ルビーへは過去の傷をえぐるような言葉を投げかけます。
一見すると悪意ある行動に見えますが、これは停滞している物語を動かし、彼らを役割(復讐者やアイドル)に縛り付けるための、神としての「演出」だと考えられます。
彼女は、彼らが「役割」を果たしきるまで、舞台から降りることを許さないのです。
神話から確定?ツクヨミ=八咫烏・アメノウズメ説
なぜ彼女は「カラス」を従え、わざわざ「芸能界」に関わるのか?
その理由は、日本神話の2柱の神に関連づけると辻褄が合います。
① 八咫烏(ヤタガラス)説:導きの神
作中の描写から最も確実視されているのが、「八咫烏(ヤタガラス)」の化身説です。
- 八咫烏とは:日本神話における「導きの神」。神武天皇を大和(奈良)へ導いたとされる3本足のカラス。
- 根拠:ツクヨミの周囲には常にカラスがいる。また、天照大御神(ルビーの象徴とされる)の子孫を導く役割を持つ。
迷えるアクアたちに道を示し(たとえそれが修羅の道であっても)、目的地へと誘う姿は、まさに導きの神そのものです。
② アメノウズメ説:芸能の神
もう一つ、本作のテーマ「芸能界」と深く関わるのが「アメノウズメ(天宇受売命)」の要素です。
アメノウズメは、岩戸に隠れたアマテラスを外に出すために、岩戸の前で踊ったとされる「日本最古の踊り子(芸能の神)」です。
ここでのポイントは、「演技(踊り)によって、隠された真実(アマテラス)を表舞台に引きずり出した」という点です。
ツクヨミが映画『15年の嘘』に参加し、嘘(フィクション)である映画作りに関与するのは、この映画こそが「嘘に隠された星野アイの真実」を暴くための儀式だからではないでしょうか。
彼女は芸能を司る神として、この最大のショーを見届けるつもりなのです。
過去の考察「ツクヨミ=〇〇」説の真偽
連載中には様々な説が飛び交いましたが、現在の展開から否定されつつある説も整理しておきます。
仮説①:星野アイの転生説
【現在の見解:否定】
「死んだアイが神となって戻ってきた」という説ですが、ツクヨミ自身がアイの魂について「星になって消えた(もう戻らない)」と客観的に語っています。
彼女にとってアイは、あくまで観測対象である「完璧なアイドル」であり、自分自身ではないようです。
仮説②:さりなの生まれ変わり損ねた命説
【現在の見解:可能性低】
「さりなが本来産むはずだった子供」や「失われた命」の集合体という説。
エモーショナルな説ではありますが、彼女が持つ知識が個人的な情念を超えており、土地(高千穂)に根付く神話的な背景が強いため、個人の残留思念である可能性は低いでしょう。
まとめ:ツクヨミは復讐劇を見届ける「観測者」
「推しの子」におけるツクヨミ(カラスの少女)の正体をまとめます。
- 正体:八咫烏(導き)やアメノウズメ(芸能)の性質を持つ、土地神に近い存在。
- 姿:4~5歳の幼女の肉体を持ち、子役としても活動可能。
- 目的:アクアとルビーの物語を、神話的な結末へと導くこと。
- 立ち位置:敵でも味方でもなく、物語を完遂させるための「舞台装置」兼「観測者」。
ツクヨミの不敵な笑みの裏には、私たち読者が見えていない「物語の結末」が既に見えているのかもしれません。
彼女がカラスを通じて何を見つめ、アクアたちをどこへ連れて行こうとしているのか。アニメや原作を見返す際は、ぜひツクヨミの「意図的な干渉」と「神としての視線」に注目してみてください。