推しの子のさりなはなぜ親に絶望した？12歳の死因と母親の残酷な真実

社会現象を巻き起こした人気アニメ『推しの子』。その壮大な復讐劇とアイドルの物語、全ての「原点」にいるのが天童寺さりなという一人の少女です。

彼女はわずか12歳でこの世を去りました。その死因は病気ですが、彼女が最期に味わった苦しみは、病魔による痛みだけではありません。

アニメ第1話や原作の冒頭で描かれた彼女の笑顔の裏には、「両親に捨てられた」という壮絶な孤独が隠されていました。なぜ彼女は自身の家を「地獄」と呼び、絶望の中で息を引き取ったのか。

この記事では、天童寺さりなのプロフィールや病気の詳細に加え、母親との残酷な確執、担当医ゴローとの魂の絆、そして星野ルビーへ受け継がれた想いを深掘りして解説します。

天童寺さりなの年齢・死因・声優｜詳細プロフィール

物語の冒頭、宮崎県の山奥にある病院でひっそりと闘病生活を送っていたさりな。まずは彼女の生きた証であるプロフィールを整理します。

同年代の子供たちが学校へ通い、友達と遊ぶ当たり前の日常。彼女にはその全てが許されませんでした。無機質な病室のベッドの上だけが世界の全てであり、タブレット越しに輝くアイ（B小町）の姿だけが、彼女を支える唯一の光でした。

死因の病気「退形成性星細胞腫」と闘病生活

さりなの命を奪ったのは、「退形成性星細胞腫（アナプラスチック・アストロサイトーマ）」という難病です。

これは脳の神経膠細胞（グリア細胞）から発生する悪性腫瘍の一種であり、作中での描写からも、その過酷さが伝わってきます。

• 身体機能の喪失：最初は転びやすくなる程度だったものが、次第に自力歩行が困難になり、物を掴む力さえ失われていきます。
• 意識障害とめまい：腫瘍による脳への圧迫で、常に激しいめまいや頭痛に襲われ、意識が混濁する時間が増えていきます。
• 生存率の低さ：治療が難しく、診断されてからの余命が短いケースが多い病気です。

「アイのように踊りたい」という切実な願いとは裏腹に、身体は鉛のように重くなっていきました。それでも最期の瞬間までアイの映像を見続け、不自由な手で振りを真似ようとした姿は、彼女のアイドルへの執念そのものでした。

なぜ親に絶望した？「地獄」と呼ばれた家庭環境の真実

天童寺さりなというキャラクターが抱える最大の闇は、病気そのものよりも、彼女が置かれた家庭環境にあります。彼女は自身の境遇をこう独白しています。

「先生は知らないもんね。私の家が…地獄だった事」

裕福な家庭に生まれながら、なぜ彼女はこれほどまでに孤独だったのでしょうか。そこには、母親（天童寺まりな）による事実上の育児放棄（ネグレクト）がありました。

1. 物理的な隔離と放置

両親は、病気のケアや娘の衰弱していく姿を見る負担から逃れるため、東京の自宅から遠く離れた宮崎県の病院へさりなを転院させました。これは治療のためという名目の、実質的な「厄介払い」でした。

2. 更新されない衣服と途絶えた面会

入院当初こそ訪れていた両親ですが、次第に足が遠のき、最期には全く顔を見せなくなりました。
さりなが持っていた服や靴は、入院した当時のサイズのまま。成長してサイズが合わなくなっても、新しいものが届くことはありませんでした。それは、親が娘の成長に関心を持たなくなった証拠でもあります。

3. 母親が選んだ「新しい家族」

最も残酷な事実は、さりなを病院に置き去りにしている間、母親は別の場所で新しい子供を産み、幸せな家庭を築いていたことです。
さりなが冷たい病室で「ママが来てくれる」と信じて待っていたその時、母親は別の子供に愛情を注いでいたのです。この「自分は愛されなかった代わりの存在がいる」という絶望こそが、彼女の心を壊しました。

担当医ゴローとの「結婚」の約束と特別な絆

親に見捨てられ、孤独の淵にいたさりな。そんな彼女にとって、担当医であるゴロー（雨宮吾郎）は、医師以上の特別な存在でした。

ゴロー自身も出産直後に母を亡くした過去を持ち、二人は互いに欠けた「家族の温もり」を埋め合わせるように心の距離を縮めていきました。

「先生、私と結婚して！」の真意

さりながゴローに告げた「私が16歳になったら結婚して」という言葉。これを単なる子供の冗談と捉えることはできません。

これは、「世界で唯一、自分を直視し、最期までそばにいてくれる人」への精一杯の愛情表現であり、「16歳まで生きたい」という叶わぬ願いの裏返しでもありました。
ゴローもその想いを真摯に受け止め、彼女の最期を看取ります。さりなの死後、彼がアイを推すようになったのは、さりなが愛したものを自分も愛することで、彼女の生きた証を残そうとしたからに他なりません。

星野ルビーとしての転生と「二度目の人生」

12歳で悲劇的な最期を迎えたさりなですが、その魂は「星野ルビー」として新たな物語を紡ぎ始めます。

前世の記憶を原動力に

アイの娘として転生したルビーは、前世（さりな）の記憶を鮮明に持っています。だからこそ、彼女の行動には強い説得力があります。

• 走れる喜び：前世では寝たきりだった反動で、健康な身体で走ったり踊ったりできることに爆発的な喜びを感じています。
• アイからの無償の愛：前世で最も渇望していた「母親からの愛」をアイから一身に受け、ルビーの精神的な欠落は埋められました。

アイドルを目指す本当の理由

ルビーがアイドルを目指すのは、単なる憧れだけではありません。「一度目の人生で誰にも見つけてもらえなかった自分」へのリベンジであり、「今度こそ誰かに必要とされたい、愛されたい」という魂の叫びです。
彼女のアイドル活動への執念が時に狂気じみて見えるのは、それが彼女にとって「生きている証明」そのものだからなのです。

まとめ：天童寺さりなの物語は「推しの子」の核である

天童寺さりなのエピソードは、『推しの子』という作品の根底に流れる重要なテーマを象徴しています。

• 絶望の中の光：病気とネグレクトという「地獄」の中でも、推し（アイ）という希望を見つけ出しました。
• 救済の絆：親には愛されませんでしたが、ゴローとの出会いが彼女の孤独な魂を救いました。
• 未来への継承：ルビーとしてステージで輝く姿は、さりなとして生きられなかった時間の続きでもあります。

ルビーの瞳の中で輝く一番星。それは、かつて病室で夢見たアイドルへの憧れと、天童寺さりなとして流した涙が結晶となったものなのかもしれません。